『訪問看護師になりました』
10年以上のブランクから働き始め、ようやく3ヶ月を迎えました。これまで結婚、妊娠、出産など、13年間を専業主婦として過ごしてきました。最近になり、大学病院で働いていたころの話を医療に興味をもち始めた娘に聞かせたり、社会で活躍する女性から話を伺ったりする中で、少しずつ「母」だけではない「自分」を思い出し始めていました。そんな時、大学病院時代の同期から在宅医療の話を聞かせていただき、この度復職することになりました。
ブランクは覚悟していたものの、完全なる浦島太郎状態(笑)でのスタートでした。
薬はほとんどジェネリックに...
記録は全てIT化に...
医療用語は忘却の彼方...
しばらく離れていた「社会」に属する緊張感は大きく、全てにおいて不安一杯でした。しかし、それを一気に払拭してくれたのは、人に温かく看護に熱いスタッフの皆さんでした。訪問看護といえば、孤独なイメージが強く、ひとりで看護を完結するものだと勝手にイメージしていていましたが、現場はむしろ逆でした。それぞれ一人で訪問しますが、常にスケジュールやご利用者様の様子を専用アプリでやりとりし、適切なケアを相談していきます。コミュニケーションアプリが、病院でいうナースステーションになっており、むしろ病院のそれより活気が溢れていると感じています。スタッフ同士の性格やスキルなど、個性を認め合った信頼関係は確たるもので、互いの休憩時間が重なったものなら、オフィス内は看護の話で持ちきりです。ああでもないこうでもないと考え方やケアについてディスカッションしており、ご利用者様ファーストのプロ意識を見せつけられている毎日です。
訪問看護の醍醐味は、ご利用者様やそのご家族との密な関係だと感じています。コロナ禍のため家族単位での自粛が余儀なくされる中、訪問看護師は自宅に迎え入れられる数少ない他者であり、家族に近い存在になります。ご利用者様やご家族から、「待っていましたよ」「本当にありがとう」「あなたこそ体に気をつけて」など、まだまだ経験の浅い私に身に余る言葉をかけていただけます。そんな言葉の数々が自身の幸せや活力に変換されていくのを日々実感しています。
最近では子供達が、帰宅した私を玄関まで迎えにきて、「今日はお仕事どうだった?大変だった?」などと尋ねながら、大量の買い物品を運ぶお手伝いをしてくれます。我が家では夕食の時に、子供達からその日のエピソードを聞くことが日課だったのですが、私の訪問看護エピソードが大トリとして加わるようになりました。介護士や訪問薬剤師をしているママ友と今までなかった会話に花が咲き、ママ仲間とのLINEは激減し、母としての時間が変わってきています。働く母になった私が子供たちにどう映っているのかはわかりませんが、私の経験から、人としての強さや温かみ、何より感謝の気持ちを子供に学んでもらいたいと考えています。
潜在看護師の復職が求められることをしばしば耳にしている中、まさにそうであった私に復職の機会が与えられたことや、医療の力になれることに感謝と同時にこの上ない喜びを感じています。10年もの間、子供を乗せていた自転車のチャイルドシートは、今や訪問バッグの定位置となりました。電動ママチャリもまた、私の大切なアシスト役として、日々何十キロもの走行を頑張ってくれています。
ゆみの訪問看護ステーション 岡本 恵