睡眠時無呼吸症と高血圧・心不全
いびきや日中の眠気などで知られる「睡眠時無呼吸症」。
交通事故との関連で、目にすることがありますが、最近、高血圧をはじめとした生活習慣病や脳卒中、心不全といった脳心血管系疾患との関連性についての解明がすすんできています。
とくに、高血圧や心不全の原因疾患になることが明らかになり、北米における高血圧のガイドライン(JNC-7)でも、高血圧、また治療抵抗性高血圧(複数の降圧剤投与でも、難治性の高血圧)の最も一般的な原因疾患として、とりあげられています。
日本高血圧ガイドラインでは、2009年から、高血圧の原因疾患として、睡眠時無呼吸症の存在が明記されはじめました。
また、心不全の原因疾患にもなることがわかり、アメリカ心臓病学会では心不全の原因疾患として、睡眠時無呼吸症をあげています。
既に心不全を発症している人についても、睡眠時無呼吸症の合併が予後のリスクファクターのひとつであることがわかり、その診断や積極的治療に注目が集まっています。
専門領域では、このように一般的な関連性として認知されていますが、すべての医療者の間で十分に認識されているとはいえません。
睡眠時無呼吸症の事例
50歳男性、肥満はなし(body mass index 23.0 kg/m2)
某大学病院で高血圧を専門としている医師にかかっており、5種類の降圧剤を内服しても、なかなか血圧が下がらない状況。
たまたま見た週刊誌で、無呼吸症との関連を知り、外来を受診された。
確定診断のための終夜睡眠ポリソムノグラム検査(一泊入院)をおこなったところ、1時間あたりの無呼吸低呼吸指数(AHI)が60回/時で、重度の無呼吸症と診断された。
そこで、持続陽圧呼吸療法(CPAP)をおこなった結果、無呼吸症の改善にともない、血圧が低下し、降圧剤を減量することができた。 潜在的に、同じような患者さんがとても多く存在していることでしょう。