心不全/心臓疾患/高血圧
心不全/心臓疾患/高血圧について
生活習慣病から高血圧をはじめとする循環器疾患、心不全まで。ひとりひとりに合わせて、総合的に管理します。
また、心不全治療に関しては、従来の心不全治療に加え、さまざまな付加的治療・ケアを提供します。
心臓病の行く末となる心不全の予防・治療・ケア
慢性心不全とは
慢性心不全は、「慢性心不全は様々な原因による心筋の障害により、心臓のポンプ機能が低下し、末梢臓器への有効な血流に障害をきたし、日常生活に支障を及ぼす様態」と定義されます。
心不全は、すべての心疾患の行く末であり、致死性不整脈もふくめた突然死のリスクもあり、適切な治療を行わないと、その生命予後は悪いことが言われています。
病状の進行に伴い、労作時息切れや四肢の浮腫などの症状が出現し、日常生活が障害されます。
当クリニックが考える、慢性心不全の治療ケア(4STEP)
心不全クリニックとして、入退院を繰り返す心不全患者さんの増悪予防、症状緩和、QOL向上を目指し、治療・ケアに取り組んでます。私たちは、左記のような4つのステップを提唱し、実践してます。以下、STEP毎に紹介いたします。
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従来の確立された心不全治療
心不全は、多くの心臓疾患が最終的に到達する症候群であり、集学的・集約的医療を行う必要があります。本邦および欧米における慢性心不全ガイドラインに示されているように、心臓の収縮機能が低下した慢性心不全患者には、すでに確立した治療があります。まずは心不全のステージにあった適切な治療が行われていることがとても大切です。これらの確立された治療により、多くの心不全患者の平均寿命が延びました。
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増悪因子を抑える
心不全は増悪を繰り返すことで病態悪化が進行します。増悪を起こす要因は、数多く存在し、一つひとつに対して注意しなくてはいけません。心不全の増悪と生活は密接に関連しており、患者さんの生活環境を調整し、増悪因子を抑えるように努めています。
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多角的な付加的治療・ケア
すでに適切な治療がされているにも関わらず、日常生活に支障をきたす難治性の心不全患者が増加しているのが現状です。当クリニックでは、最新のエビデンスをもとに、すでに確立されている適切な心不全治療のほかに、包括的に個々の患者さんに合った、心不全への付加的治療・ケアを提供します。
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- 在宅医療治療機器
- 在宅酸素療法(HOT)/ 持続陽圧呼吸療法(CPAP)/ 在宅人工呼吸機器(ASV)
- 併存疾患への積極的介入
- 睡眠時無呼吸症、慢性閉塞性肺疾患、肺高血圧症、貧血など
- 運動療法(運動リハビリテーション)
- 精神療法
- 抑うつ、不安、認知機能障害に対する治療・ケア
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- 薬物治療
- 内服薬: 経口強心薬や水利尿薬など
点滴薬: 外来または在宅での強心薬または血管拡張薬の間欠点滴治療
- 限外濾過療法、在宅腹膜透析療法
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生活の基盤である在宅ケア
心不全は、病院ではなく、自宅など、生活の場で状態が悪くなって、入院を繰り返します。生活には個別性があり、一人ひとりがそれぞれ違う生活をしているため、実際の生活をみることで、初めて理解できることが多くあり、心不全医療は、個々の患者さんごとに、医療と介護を多職種のスタッフで連携しながら、生活の場でのケアを行うことが重要となります。
在宅治療機器(酸素や人工呼吸器)の導入・管理
- ASV(アダプティブ・サーボ・ベンチレーション)
- 心不全患者さんに多く見られるのが、呼吸と無呼吸が周期的に繰り返されるチェーンストーク呼吸というものですが、その周期に合わせて、自動調節が可能な陽圧呼吸療法です。夜、お休みになるときに、ASVのマスクを使用します。これにより、心不全の改善への有用性が認められ、心不全の付加的治療のひとつとして、実用されています。
血管疾患について
近年、本邦においても食生活の欧米化や高齢化に伴い、血管疾患が増加しています。中でも、下肢の末梢血管疾患(PAD:Peripheral arterial disease)の罹患率が、2000年に比較し2010年では世界規模で約23%増加しており全世界で取り組むべき課題となっています。65歳の患者様で約10%、80歳以上の患者様で約15%合併しており頻度の高い疾患です。
本邦では、下肢の末梢血管疾患の中で、動脈硬化性のものを閉塞性動脈硬化症(ASO arteriosclerosis obliterans)と定義していましたが、近年は動脈硬化性の閉塞疾患がほとんどを占めるようになり現在ではPADとASOはほぼ同義として扱うようになりました。
PAD患者は、下肢血流不全から一定の距離を歩くと出現する下肢疼痛、更なる虚血進行による安静時の下肢疼痛やチアノーゼ、下肢壊疽などを呈してきます。
ただし、下肢動脈の血流不全を合併していても症状が出現する患者は約半数です。つまり、下肢の症状があるから検査をするという考え方では、約半数のPAD患者は診断されず見逃されてしまします。
PAD患者は、症状のあるなしに関わらずその生命予後は不良であり、5年以内の死亡率が約30%でその半数以上が脳血管疾患あるいは心血管疾患による死亡と報告されています。よって生命予後不良なPAD患者を適切に診断し、生命予後改善に向けた生活習慣改善や内服治療などを開始することが大切です。
PADの診断方法としては、足首の血圧と上腕の血圧の比を測定する足関節上腕血圧比(Anckle Brachial Pressure Index:ABI/ABPI)測定検査が、簡便かつ確立した方法です。
歩いていて足が痛くなる跛行症状、足の傷が治りにくい患者、壊疽を呈している患者などの他に、無症候でも合併率が高い患者もABIを測定することが推奨されています。
65歳以上、50歳以上65歳未満で糖尿病合併あるいは喫煙している方、慢性腎臓病の診断を受けている方、既に狭心症・心筋梗塞・脳梗塞など他臓器に動脈硬化性疾患を有している方、などはPADの合併率が高いため症状が無くても一度ABI検査を受けることが推奨されます。
血管疾患の中には、下肢動脈疾患のみならず、他にも多くの疾患があります。
当クリニックで扱っている血管疾患を以下に列挙します。
- 下肢動脈疾患、PAD、ASO
- 下肢静脈疾患、下肢静脈瘤、深部静脈血栓症、血栓性静脈炎:弾性stocking、レーザーによる焼灼術、
手術による静脈抜去術、内服による抗凝固療法などの治療があります。 - 頸動脈狭窄症:脳梗塞の原因となります。
- 胸腹部大動脈瘤:大きくなると破裂する危険性があります。
- 腎動脈狭窄症:高血圧、腎機能障害、心不全などを引き起こします。
- 鎖骨下動脈狭窄症:めまいや上肢の倦怠感などの症状が出現します。
手術加療などが必要なれば、榊原記念病院などでの治療を検討させて頂きます。
当クリニックではABI検査の他に血流阻害部位やプラークの性状などを診断できる超音波検査なども行っています。
成人先天性心疾患について
生まれつきの心臓病である先天性心疾患は、小児期までに見つかることが多く、手術やカテーテルによる治療が行われますが、年齢が進むにつれて初めて見つかることも少なくありません。その疾患を抱えた患者が大人になると、小児とは違った問題が生じてきます。
また、小児期に行われる手術療法は年齢を経るごとにさまざまな問題を生じることも、近年分かって来ました。生まれつきの心臓病をもち、成人となった患者を成人先天性心疾患患者と呼びます。これらの先天性心疾患の多くは、慢性疾患として付き合っていくこととなります。小児期と成人期では症状や管理方法が異なります。そのため、起こりうる問題を未然に防ぎ、適切な診断と治療を、安定的に続けることが必要となります。
先天性心疾患は、加齢により、心筋障害および弁膜障害を呈するようになり、心機能不全や、不整脈、伝導障害を示すことがあります。
- 当院で診ている成人先天性心疾患の例
- 心房中隔欠損症
- 心室中隔欠損症
- 大血管転位症
- ファロー四微症
- エブスタイン病
- 大動脈縮窄症 など
また、心臓以外でも、成人になるとともに、就業、医療保険、生命保険、心理的社会的問題、結婚、出産、喫煙、飲酒、遺伝など成人特有の問題を抱えるようになります。そのため、各専門医、看護師、ソーシャルワーカーなどによるチーム医療での、QOLや社会生活に目を向けた包括的なケアを行う必要があります。
当院では、成人先天性心疾患に対して、専門的な知識を持った医師や看護師が訪問し、診療を行っていきます。
成人先天性心疾患 担当医
- 内藤 祐次(ないとう・ゆうじ)
日本循環器学会認定循環器専門医
日本心臓血管外科学会認定心臓血管外科専門医
日本外科学会認定外科専門医
米国医師免許
横浜市立大学医学部卒業、東京女子医科大学心臓血管外科に所属し、先天性心疾患の手術、治療に取り組む。米国医師免許を取得し、アメリカ合衆国テキサス小児病院、サンフランシスコUCSF小児病院にて、多くの先天性心疾患患者を診る。帰国後は、成人先天性心疾患を中心に循環器内科医として従事。当院では、これまでの診療経験、知識を生かして、成人先天性心疾患を中心として、内科、心臓疾患全般にわたり、それぞれの患者さんに最も適した在宅訪問診療を行う。