作業療法と「欲望形成支援」

訪問リハビリテーション2023年10月04日

リハビリテーションの開始にあたっては「お風呂に入れるようになるため」などの「目標」を設定する必要があります。中には「目標と言われても...」と困ってしまう方もいらっしゃいます。

「意思」をもち「目標」を決定していくことは、そう簡単なことでないのだと、担当している方と話すたびに感じています。

 

國分功一郎さんは熊谷普一郎さんとの共著『〈責任〉の生成-中動態と当事者研究』で

「意思決定支援」という言葉に代えて、「欲望形成支援」という言葉をもってくることを提案しています。意志(意思)でなく欲望。決定でなく形成です。人は自分がどうしたいのかなど、ハッキリとはわかりません。人は自分が何を欲望しているのか自分ではわからないし、矛盾した願いを抱えていることも珍しくない。だから、欲望を医師や支援者と共同で形成していくことが重要でないか」と述べています。

 

今までできたことができなくなったり、体力や気力がなくなったりした時に少しずつ運動や対話を重ねることで、やりたいこと事を一緒につくっていく、それ自体も作業療法(以下OT)、欲望形成支援だと意識しておこなっています。

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庭の手入れをしていた時に転倒し骨折したAさんは、家族から「庭の手入れは自分たちが行うから、Aさんはしないように」と言われていました。OTでは筋力、体力の向上、歩行の安定性を目標に外歩きなどをおこなっていましたが、行き帰りには庭を見て、「木が伸びていて気になる」といった話が多く出てくるようになりました。

しかし、そのことは「家族には迷惑をかけられない」と言えない様子だったため、ご家族にリハで庭仕事をすることを提案しました。作業療法士が枝を切り、それをゴミ袋に入れるためにAさんが座りながら細かく切るというOTの内容を説明し、了承を得られたため、開始しました。すると、Aさんからは「あそこに〇〇が咲いているわよ」などのお話も聞かれるようになりました。それは、作業療法士にもとても嬉しい時間になりました。

 

一緒に「やりたいこと」を形成していく、そこから始まるリハビリテーションもあります。ご興味のある方はご連絡ください!

訪問リハビリテーション部 作業療法士 金丸

 

<責任>の生成ー中動態と当事者研究

國分功一郎 (), 熊谷晋一郎 () 出版社 ‏ : ‎ 新曜社 (2020/11/22)

ISBN-10 : 478851690X ISBN-13 : 978-4788516908

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